お食い初めのメニュー・献立
お食い初めでは、「一汁三菜」を基本としたお祝い膳を用意します。地域ごとにさまざまな食材がありますが、いずれも縁起の良い意味合いのものが用いられます。代表的な献立は、鯛など尾頭(おかしら)つきの魚と、赤飯、吸い物、煮物、香の物です。
一汁三菜
昔ながらの日本の食事は、一汁三菜が基本になっています。一汁三菜とは、ご飯に汁物、おかず3品(主菜1品、副菜2品)で構成された献立です。厳密には、飯、汁物、香の物、なます、煮物、焼物であり、飯と香の物は数えません。
ご飯でエネルギー源となる炭水化物を、汁もので水分を、おかずでその他の栄養をバランスよくとることができます。多くの栄養素が交互に胃に入って混ざり合うことで、消化や吸収がよくなったり、余分な脂肪や糖分、塩分を排出したりといった効果も期待できます。また、一汁三菜は「三角食べ」の意味もあります。それぞれのお料理を三角を描くように順番に食べます。主菜、副菜の間に汁物やご飯を挟むことで、バランスよく早食いを防ぎ、胃腸に負担をかけない、健康的な食べ方です。赤ちゃんの健やかな成長を願うお食い初めの献立も、まんべんなく栄養を摂取することができる食べ方にあやかっているのかもしれませんね。
尾頭付き祝い鯛
お食い初めに欠かせない鯛は、頭から尻尾まで一匹丸ごと用意します。「首尾一貫(初めから終わりまで全うする)」の意味から、長寿を願いが込められています。尾頭つきのものを選びましょう。
鯛は赤い色がおめでたいということからお祝い事によく登場する魚です。七福神の恵比寿様が抱えているのも鯛であり、昔からお祝いの席で食べられてきました。
鯛がめでたいとされるのはなぜ?
鯛は古くからお祝いの席で振る舞われてきた魚です。「めでたい」の語呂合わせであるのに加えて、体の色や寿命、味、栄養価の高さから一番の縁起物食材とされてきました。鯛の体は鮮やかな赤色で、神様が好む色、邪気を祓う色といわれ、神様への献魚としても重用されていました。また、鯛は、ときには40年以上生きるほど寿命が長く、栄養価が他の魚に比べて高いことも、お祝い事にぴったりな理由です。お食い初めで鯛を食べさせるまねをするのは、「赤ちゃんが一生健康で幸せに過ごせるように」という願いがこめられています。江戸時代にはすでに鯛はめでたい魚として、また美味な高級魚として扱われていたようで、徳川家康が晩年、鯛の天麩羅を食べて「この歳になってこのように美味いものがあるとは知らなんだ」と言わしめたほどその美味さは群を抜いていたようです。輝く赤色、大きな頭などの立派な見かけからも、見た目よし、食べてよし、の鯛は、日本の伝統的なお祝いのシンボルとされてきました。
鯛の種類は24種類あるといわれています。その中でも真鯛は、桜色に輝く体に、眼の上や体の側面に宝石のアクアマリンを思い出すようなきれいな水色が点在しています。深みのある身の味も第一級品とされ、最高級魚 「魚の王様」とよく言われますが、その姿は、妖艶のピンク色を身にまとい、ブルーのアイシャドウ。真鯛は女王様といってもよいかもしれません。
赤飯
赤飯には邪気をはらったり、魔よけの意味がこめられ、お祝いの席で振舞われてきました。というのも、古来から赤という色には邪気を祓う力があると信じられてきたからです。地方によっては、悪いことがおきるとお赤飯を食べて、凶を返して福とする「縁起直し」を行う地域もあるようです。お食い初めでは、赤ちゃんが病気や災難に遭わず、健やかに成長するよう、願いを込めてお赤飯をいただきましょう。
蛤
のお吸い物
お吸い物には、「吸う」ちからが強くなるようにという意味が込められています。お食い初めでは主に蛤のお吸い物が用意されます。蛤は二枚貝がぴったりと合うことから、良縁を意味します。というのも、蛤は対になっている貝以外とは殻が合わないことから、一対の貝のように良い伴侶に恵まれ、幸せになってほしいという願いがこめられています。
煮物
おめでたい意味のある食材や、旬の野菜を煮物にしましょう。紅白でおめでたい人参、大根、かぼちゃなどがおすすめです。昆布は「よろこぶ」にかけて、一家発展の縁起物食材です。野菜は飾り切りをすると、見た目の華やかさが増します。かぼちゃは、「亀の甲羅」の形の六角形に。長寿の願いが込められています。人参やれんこんは可愛らしいお花の形に切ってみましょう。れんこんは穴があいていることから、先が見える、見通しがきくようにと明るい先行きを表します。また、たけのこはまっすぐにすくすくと成長するようにという意味があります。
香の物
香の物(漬物)には長寿の意味があります。季節の野菜や地元の名産品などを漬けこんだ漬物を使用します。香の物の代わりに、なますなどの酢の物を用意しても良いでしょう。その場合、紅白なますにすると縁起がよく彩りもきれいです。また、たこの酢の物も「多幸」にかけて縁起物とされています。
歯固めの石
歯固めの石とは、石のように丈夫な歯が生えますようにという願いを込めて用意するものです。お食い初めの際、石に箸をつけ、その箸を赤ちゃんの歯茎にちょんちょんとあてます。これを歯固めの儀式と呼びます。石の代わりに梅干しを使用することもあります。梅干しのようにシワができるまで長生きできますように、という願いからです。
家庭ごとにいろいろなお食い初め
正式なメニューや献立、由来はありますが、お食い初めのやり方や用意するものは各家庭で色々です。こうしなければならないという決まりはありません。家族みんなで赤ちゃんの健やかで元気な成長を願いながら楽しくお祝いしましょう。
自宅で作れるお食い初めレシピ
正式なメニュー以外にも自宅で簡単に美味しく作れるレシピをご紹介します。一味違ったアレンジで気軽にお祝いを楽しむのもおすすめ。残った鯛の塩焼きを使ったレシピも絶品です。